朝食や夜食等の食事提供は給与として所得税を課税されるのか。

2018.11.29朝食や夜食等の食事提供は給与として所得税を課税されるのか。

早朝出勤時に提供する朝食の支給方法別に給与として課税されるかについて

夜勤労働の抑制や生産性の向上などを目的に,
早朝出勤(朝型勤務)を奨励する企業が増えてきています。

税務上,企業が従業員らに対して支給する食事は,経済的利益の供与として源泉徴収の対象(課税)となることが原則ですが、一定のケースでは所得税が非課税となります。

なお,ここでは「朝食」を前提とした課税関係をお伝えますが、
・夜間の超過勤務(残業)時に支給する夕食
・勤務時間内に支給する昼食
・自社の社員食堂により食事を支給する場合等

についても,基本的な考え方は同様となるため参考にしてください。

1 早朝出勤を奨励しているケース

残業の抑制等を目的として、早朝出勤を奨励しているケースでは,通常の勤務時間に変更はありません。
その早朝出勤した時間帯は,あくまで「超過勤務」となります。
税務上,「企業が従業員らに対して,超過勤務時に支給する食事は,勤務時間外に勤務しなければならないことに伴う実費弁償的なものであるため,その経済的利益に課税しなくてもよいことになっている(所基通36-24 )」。
通達では,その対象を「食事」と示しているため,夜間の超過勤務時に支給する夕食はもちろんのこと,早朝の超過勤務時に支給する「朝食」も,給与として課税しなくて良いのです。

以下,超過勤務として早朝出勤を奨励しているケースで支給する「朝食」について,異なる支給方法別に,その課税関係を確認します。

● 〈課税しない経済的利益とは・・・残業又は宿日直をした者に支給する食事〉

使用者が,残業又は宿直若しくは日直をした者(その者の通常の勤務時間外における勤務としてこれらの勤務を行った者に限る。)に対し,これらの勤務をすることにより支給する食事については,課税しなくて差し支えない。

図解は税務通信より

(1) 企業が購入した朝食(1種類のみ・全従業員共通)を無料で支給する方法

この支給方法は,

①企業が小売店から朝食を購入
②従業員らに対して
③その朝食(1種類のみ・全従業員共通)を無料で支給するものです。

この支給方法による朝食は, 所得税基本通達36-24 に該当するため,「非課税」となります。

全ての従業員に朝食の無料支給を受けるのであれば,仮に,全員が支給を受けていなくても,特段,課税関係は生じない。
ただし,特定の役員やその親族などといった特定の人に限定し支給した場合には,従業員らに対する福利厚生ではないので,経済的利益の供与として課税対象となります。

(2) 企業が購入した朝食(複数種類・選択制)を無料で支給する方法

①企業が他の企業から複数種類の朝食を購入
②従業員らに対して,その朝食を提示し
③従業員らが,その中から選択して無料支給されるもの

この支給方法による朝食も,所基通36-24 に該当するため,「非課税」となる。

(3) 従業員らが購入した朝食を企業が金銭で負担(精算)する方法

①従業員自らが朝食を購入
②企業がその代金(金銭)を全額負担(精算)

この場合,支給する金銭が,朝食の支給と同視できるのであれば,所基通36-24  に該当し,「非課税」となる。

なお,源泉所得税関係の個別通達『深夜勤務に伴う夜食の現物支給に代えて支給する金銭に対する所得税の取扱いについて(直法6-5,直所3-8,昭和59年7月26日)』では,夜食の現物支給に代えて支給した金銭(1回につき300円以下等)を「非課税」と示している。

2 勤務時間を前倒ししているケース

勤務時間する時間を早め,早朝出勤した時間帯は,あくまで通常の「勤務時間内」となります。

税務上,勤務時間内に支給する食事は,
①従業員らが食事の金額の50%以上を負担,
②企業が負担した食事の金額が月額3,500円以下
上記の2つの要件を満たせば,その経済的利益はなかったものとなります。

昼食も支給する場合は,朝食と昼食の金額の合計額で,所基通36-38-2を判定してください。

● 所基通36-38-2〈食事の支給による経済的利益はないものとする場合〉

使用者が役員又は使用人に対して支給した食事(36-24の食事を除く。)につき当該役員又は使用人から実際に徴収している対価の額が,所基通36-38により評価した当該食事の価額の50%相当額以上である場合には,当該役員又は使用人が食事の支給により受ける経済的利益はないものとする。ただし,当該食事の価額からその実際に徴収している対価の額を控除した残額が月額3,500円を超えるときは,この限りでない。

(1) 企業が購入した朝食(1種類のみ・全従業員共通)を支給する方法

①企業が小売店から朝食を購入した上で
②従業員らに対して,その朝食(1種類のみ・全従業員共通)を支給
③従業員からその代金の一部の支払いを受けるものである。

この支給方法の要件を満たすことで,「非課税」となる。
例えば,1食300円の朝食について,従業員が150円を負担していれば,企業負担の金額も月額3,000円(150円×20日)となり,非課税と取り扱うことができる。

(2) 企業が購入した朝食(数種類・選択制)を支給する方法

①企業が小売店から数種類の朝食を購入した上
②従業員らに対して,数種類の朝食を提示し
③従業員らが,その数種類の朝食の中から選択して受け取り
④従業員らがその代金の一部を支払うもの

この支給方法による朝食も,所基通36-38-2 の要件を満たすことで,「非課税」となる。

(3) 企業が購入した朝食を無料で支給する方法

上記 1 (1)と同様に
①企業が小売店から朝食を購入
②従業員らに対して,その朝食(1種類のみ・全従業員共通)を無料で支給するもの

この支給方法による朝食は,従業員が食事の代金を負担していないため,経済的利益の供与として課税対象となる。

上記 1 (1)は,「超過勤務時」に無料支給するものであることから非課税となるが,「勤務時間内」の無料支給は,非課税とはならないのです。

(4) 従業員らが購入した朝食を企業が金銭で負担(精算)する方法

この方法は,上記 1 (3)と同様に,
①従業員自らが朝食を購入し
②企業がその代金(金銭)を全額負担(精算)するもの

この場合も,従業員が食事の代金を負担していないため,経済的利益の供与として課税対象となる。